NPO法人チェンジングライフ

貧困や非行等の理由で自立困難な状況にある、青少年の自立支援をしています。

手離すことが、成長を促す?

手離すことが、成長を促す?
~その一~
3年ほど前に、試験観察でホームに入所していた少年の口癖は「誰か、俺を殺してほしい。」だった。
第二の口癖は、「俺は(女性の)ヒモで生きて行きたい。」
彼は死にたいくらい人生を悲観していた。
彼の受けてきた虐待の傷は
並大抵ではなかった。
そののち、
試験観察を終えても、その時点で、帰れる適当な場所がないため、保護観察処分になって、そのまま、ホームに残ることになった。
試験観察中は、何とか、だましだまし、就労につけていた。そして、そこそこ、まとまった額の貯金もできた。
しかし、保護観察に切り替わって、2ヶ月目には、仕事には行かなくなり、
「働くのは嫌だ。死にたい。殺してほしい。ヒモになりたい。」と連呼するようになり、日々、彼の部屋に行き、話し合いを繰り返すも、どうすることも出来なくなった。ほぼ、引きこもりになってしまった。
仕事には、一切行かないが、預けてる貯金を全て渡してほしいとせがまれた。
打つ手がない日々の中で、頭を抱えた。
彼の口癖や態度を見るにつけ、こちらも
苦しくなった。毎日スタッフで代る代る、彼の部屋に訪れるも、彼はうす暗い部屋で布団をかぶり、顔を半分出して、冒頭の口癖を連呼する。
そして、ある日、彼のことを真剣に思うがゆえに、賭けに出た。
ホームで抱えていても、彼のためにならない。そう確信した。
(注記)※私達のホームに来る若者は、私達のような支援団体に繋がったのが初めての子もいれば、他団体から既に支援されたのちに来る子もいます。逆もしかりです。このケースは、あくまでも、私達目線での主観的な振り返りであり、以前からの支援団体や新たに繋がった支援団体、様々な支援者の方々との連続的な支援と本人の可能性が引き出された結果の現在です。この点ご理解くださり、一人の少年が成長に至る足跡を辿っていただけたらと思います。
~そのニ(最終回)~
仕事も行かず、毎日、引きこもっている彼に生活保護を進めて、ホームに残すことは考えられなかった。なぜなら、今の彼は就労意欲も生きる意欲も減退しているが、彼の年齢(当時16~17歳)や特性、また、彼の将来を考えると、生活保護を受けるよう促すのは最善とは思えない。
そこで、彼に、貯金を渡して、他府県へと手離した。
彼は出ていくことになったが、ちょうど、彼が知人を頼って身を寄せようとしている場所が昵懇にしていただいている、支援団体のカバーする地域だった。そこで、厚かましくも、彼のお世話を相談した。
手離すと言いながら、困ったときの転ばぬ先の杖となってくださる支援団体の協力を御願いした。
関係機関の担当の方からは、
再犯防止の観点からも、いま、ホームから、
飛びださせるのはちょっと…と心配を口にされた。ご意見はもっともだったが、毎日を数ヵ月見てきて、直感といっていいのか、このままの状態で無為に時を過ごすのは、彼のためにならないという気がしてならず、苦肉の策で、彼を手離したのだ。
手離したあとも、ちょくちょく、連絡を取り、心配し応援していることを伝えた。応援の方法を変えただけともいえるかもしれない。
他府県の支援団体からは、本当に手厚く、
結局、住居まで、用意していただけたり、日々、見守りもしていただいた。
だが、そこでも、就労は長続きしなかった。まだまだ、彼は若かった。そして、数ヵ月して彼は、地元にかえってくることになった。
また、彼はそこで、私たちのホームに試験観察に来る前にお世話になっていた支援団体のもとに身を寄せた。
そして、しばらくしては、また、
そこで迷惑や心配をかけ、飛び出した。
その間、彼は、彼が人生の中で出会ってきた様々な支援者や私達にも相談したり、愚痴ったりしながら、細く長く繋がり続けた。そして、ニ~三年が過ぎた。
現在、彼は、日々、仕事に行ってて、免許も取り、充実した生活を送っている。
出会った雇用主さんとのマッチングも良かったのだろうと思う。また、紆余曲折を経て、彼の中の可能性が花開いたのだろう。
出張も時々行き、話す内容からは、著しい成長を感じる。
先日も彼から電話があり、現在の頑張りを誉め、お互い、他愛もない話をしながら、笑い合った。
彼の人生の一時期にほんの少し関われたに過ぎない私達だが、向き合いながら、苦渋の決断で勇気を持って、手離すことで、社会で揉まれ、成長を遂げれる場合もある、と感じている。

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