津富 宏(TSUTOMI Hiroshi)
静岡県立大学国際関係学部 教授
特定非営利活動法人 青少年就労支援ネットワーク静岡 理事長
四半世紀前、私たちは少年院で出会った。私は教官として、彼は院生として。
野田君は昔からまっすぐだった。
彼は問題児だった。納得のいかないことがあると感情が抑えられず、教官に飛びかかった。彼はまっすぐだった。
野田君は少年院の中でキリスト教の信仰に目覚めた。お兄さんから差し入れてもらった「塩狩峠」を読んでからだ。
彼は聖書を読みふけり、信仰に没頭しはじめた。
出院して何年か経ち、野田君は新聞に載っていた。彼は牧師になり、非行をしている後輩たちにかかわり始めていた。
あの信仰は貫かれたんだと僕は思った。
彼はまっすぐだった。
その後、私は少年院出院者の団体「セカンドチャンス!」を立ち上げることとし、15年ぶりに彼と会った。
彼は、行き場のない若者を自宅や教会で預かり始めていた。
彼は「放っておかれた」若者を放っておけないのだろう。
彼はまっすぐだった。
彼は言う。人の回復には、必要とされること、信用されること、回復のための仲間を持つこと、心の飢えが満たされること、帰るところがあることが必要だと。
そう、彼自身が回復者である。
彼は、自らの経験をもとに、この団体をチェンジングライフと名付けた。
『人生は変わる』
野田君は今もまっすぐである。