NPO法人チェンジングライフ

貧困や非行等の理由で自立困難な状況にある、青少年の自立支援をしています。

アフターケア対応で必死になった一日

アフターケア対応で必死になった一日

数年前、少年院から帰ってきたE青年は、当法人の自立支援ホームに帰住し、半年のサポート期間を終え、自立に向けて、訪問回数を減らして、伴走して来ました。しかし、思った以上に一般就労に進めず、一進一退を繰り返して来ました。(発達障害などを抱え、社会適応に課題を抱えていました。)

そのE青年が、最近、遠い他県に短期間の現場作業の住み込みに行くと言い、心配しましたが、自分で決めたことを失敗でも成功でも経験することで成長になると思い、彼の意思を尊重しました。ところが、やはり、数日で仕事が続けられなくなりました。

そしてこともあろうに、遠い他県で、お金が一円も残っておらず、知り合いもおらず、部屋には水道水だけで、塩や醤油の調味料もありません。

さらに二日ほど、水道水だけで空腹をしのいでいる状況であることが彼の電話で発覚しました。

駆けつけるには、あまりにもあまりにも遠い遠い県。

そこで、帰りの交通費を早速、書留で送金したものの、お金の到着は、明日の午後以降、、、。差し迫っての課題は、二日ほど何も食べていないこと。

知り合いもいない他県でどうすればいいのか。

SNSで助けを呼びかけようかと私は考えましたが、時間は夜23時近くで、時間的にためらわれました。

このまま、何も食べず、三日目に突入するのは、余りにも可哀想だし、暑い時期だけに、命の心配も危ぶまれ、

思い切って、警察に電話し、安否確認と、責任をもって、私がお返ししますので、500円か、パンか本人に与えていただけませんかと受話器の向こうで平身低頭お願いしました。

警察は、お金を差し上げることは出来ませんが、おっしゃる通り、いのちの危険があるなら、安否確認しに行きますと言われました。

わたしは、お金も貸せない、パン一個すら与えられないということでしたら、安否確認していただいても、お腹の足しにはならないので、結構ですと言いました。

お金がない、食べるものがないのでしたら、市役所に電話してくださいと言われましたが、市役所は9時~17時で、電話かけても今は意味がありません。何とか助けてくださいとお願いしました。

ともかく警察は現場に行くとおっしゃってくださいましたが、どこか不安な気持ちでいました。彼は発達障害があり、高圧的な態度で接して来る大人には、警戒心と反発心で応答するところがあるからです。不安は的中しました。

警察官は、Eくんの住み込み部屋に行って、職質見たいなことを3~40分しているのです。

この暑さで二日食べてなくて、助けてほしいと頼んでいるのに、職質です。

私は警察と電話でケンカしました。必死すぎて、私も切れてしまった。(品性の足りなさを痛感しました。)

衣食住足りて礼節知る。せめて、職質するなら、命の危険が危ぶまれる相手に、パンの一つでも与えてから、職質してほしかった。

すったもんだを繰り返し、某県警警察官がラーメンを置いていって職質をやめて帰ってくださった。

 

しかし、今回の出来事を通して、考えさせられた。

今後、生きづらさを抱えた若者が、四方八方塞がれ、周りに応援者がいない状況に差し掛かった時、SOSを発見したら、どう支援するのか、「一つの課題」だと感じた。

なぜなら、彼は少年院に何度か入っているが、彼はこの二日何も食べない極限の中で、食物を盗んだり、人からお金を当然、奪うことはなかった。

しかし、空腹が続き、お金も一銭もなく、誰も助けてくれる人がいないという状況が続けば、人間の行動はどうなってしまうだろうか。

適切な助けがないばかりに、万引きや窃盗などの罪が起きてしまうかもわからないからだ。

(彼は少年院に入る前は手癖も少々悪く、少し粗暴なところもあったが、出院後、犯罪に手を染めていない。)
・・・・・・・

さて、翌日を迎えた。私たちが送った交通費が届くのが午後以降。

昨夜一杯のラーメンを食べても、若いのでお腹が空く。

話を聞けば、頭痛がして来たと言う。先にも言ったが、塩も醤油もないので、塩分を取れない。熱中症の初期症状にも見られた。

そこで、彼の仮住まいの住所の周りを検索したら、部屋から車で数十分のところに、カト〇ッ〇教会があった。

わたしは1分くらい悩んだ末にカトリック教会に電話をした。

「私は教会の牧師で、NPO で若者の自立支援をしていて云々。教会名も明かし、法人名も明かし、
実は…関わっている若者が、関西から短期の住み込みに行ったのですが、仕事が続かず、お金もなく、二日何も食べていません。いや、昨夜、ラーメン(インスタント)を一杯食べましたが、お腹を空かせています……

矢継ぎ早に、一通り説明した後、電話口に出てくださった御婦人はこうおっしゃった。

わかりました。一人で訪問するのは良くないので、一緒に行ってくださる方を探して、対応します。

そうして、一時間もしない内に、もう一人の方とパンとおにぎりを届けてくださいました。

何やかんやと言って、昨日、対応してくださった警察官、カト〇ッ〇の方々がいなければ、彼は熱中症で死んでいたかもしれない。

自己責任社会…。自分で自分の道を切り開かないといけないが、人は他者との関わりによって、育まれるもの。

結局他人の出来ることは知れている。しかし、その知れている小さな助け合いが、また、助け合いを生む。

支援のネットワークの全国的な連携の重要性を感じた夜だった。

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